『剣客商売』にはまるなど

 このところ『剣客商売』のテレビシリーズ、しかもシリーズ4、5にはまっている。連れが元々池波正太郎の『鬼平犯科帳』と『剣客商売』が大好きで、本はもう20年以上前に全巻揃えている。そしてテレビシリーズは録画して楽しんでいる。私もとても影響され、大好きな2作品となってしまった。連れは2作品とも何度も何度も読み込んでいる。よって、『鬼平犯科帳』は中村吉右衛門のものでないとだめで(白鸚ものも好きらしい)、かつ他の出演者もすんばらしいので、今でも時々というか頻繁に観てじーんとしたり、泣いたり笑ったりしている。(明るい気分になるには「密偵たちの宴」が一番である。)

 『剣客商売』については、連れはシリーズ4から、主人公秋山小平(藤田まこと)の息子、秋山大治郎を山口馬木也が、その妻となる佐々木美冬を寺島しのぶが演じることになって、まさに小説のイメージとぴったり!といってシリーズ4、5を熱愛しているのだった。

 『剣客商売』シリーズ4、5を今改めて見始めたきっかけがある。連れが剣客の山口馬木也のファンであり、彼が主演の映画が『侍タイムスリッパー』が公開されたことだ。単館上映が口コミにより瞬く間に全国公開となったこの映画の主演が山口馬木也!ということで連れは『RRR』以来の劇場鑑賞を熱望、私も同行。ストーリーも面白いのだけど、主演の山口馬木也がすばらしいから、というのがある。演技も殺陣もすごい。切れ味抜群の殺陣と美しい所作が際立つ。これにより山口馬木也ブームが再燃したのだった。

 4、5なので全21話しかない!テレビはニュース番組を少々見る程度でドラマは全く観ないので、毎夜毎夜4、5のどれかを観る日々が続く。毎日観ているのに、おはる(小林綾子)が洗う大根が立派だねえ、いやもうおはる役の小林綾子の演技はやっぱりすごいねえ、寺島しのぶはもう最高だね、弥七(三浦浩一)、傘徳(山内としお)がまたいいねえ、とかとか、二人して毎回感心しているのだった。

 これはいったいなんなんだろう。思うに世の中はマンネリズムに溢れ、エントロピーは増大し、言葉はハイパーインフレ気味で、消費は煽られるけれど空虚さが隠しおおせず、消費してもあまり喜びは得られない時代となってしまった。物語もそうなんだろう。そんな時代に、名作はいつまでも輝きを失うことなく残り続けている。なんていうのも紋切型の表現だ。しかし、『剣客商売』や『鬼平犯科帳』には、ストーリーも演者も撮影も音楽も何か極みのようなところに至っていて、いつまでも人を飽きさせず、感動させるんだろうな。