ケアとか消費税とか

 『千のプラトー』(G・ドゥルーズ+F・ガタリ/河出文庫)を読み直そうと開いてみたけど、書かれていることが相変わらずほぼわからない。上巻の裏表紙には「ドゥルーズとガタリによる最大の挑戦にして未だ読み解かれることない比類なき名著。」ってあるんだが、こちらは読み解くどころか、それ以前の問題でほぼ歯が立たない。そのむかーし、最初の章「序ーリゾーム」がだけが単行本で出た時に開いてみた時には、読めなかった。字面を追うのだけれど追うだけに終わった。数年前に文庫本のこの章を読んだときも同じ。でもって今回はどうなんだろうと思ったので開いてみたら、ちょっとだけだが、なるほどな、と思うところがあった。しかし3章の「道徳の地質学」になるとやばいね。勝手なイメージさえわかない。またしても字面を追い始めるだけになりつつある。(でも『ドゥルーズキーワード89』(吉川泰久・堀千晶/せりか書房)は役立ってます)

 そんなところでこの本を引き合いに出すのはあまりにおこがましいのだけれど、「序ーリゾーム」を読んでた時に、ケアについてつらつらと考えてしまった。障害のある方の介助をしているというのは、まあケアと呼ばれる行為なんだが、その行為はなんなのかねと。ケアを称賛するとか、楽しいものとか、いややりがいのある仕事なんで、とか形容するんでなく。

 利用者と介助者は、ケアのなかで、接続される。決められた行為を時間内に遂行するのだが、それにしてもミクロなやり取りは計り知れない。その時のお互いの気分、体調、他諸々の条件も接続される、というべきか、接触するというべきか。。。手を取る取られる、離す離される、体位を変える体位が変わる、話しを始める始まる・・・。ある日は手が滑る、離しが早い遅い、体が重い軽い、話しが重い軽い、いや二項対立なんてことでなく、無限のグラデーション。この行為自体を抽象化するのは無理だろう。必要とされる行為の遂行を公理系というなら、そこから派生する逃走線というか、水漏れ的なものが常に発生している。そんなことは当たり前で、遂行がトータルとして上手くいけば良いのだ、いまさら何を言う、と言われるんだろうなあ。

 機械が接続され離脱するんだが、各機械が日々変化する機械で、その接続状態があるだけで、状況は形容不能ということか。これを提供する側がそれを好きか、楽しいか、やりがいのあることだと思うかとかは人それぞれなのでそれは別の話し。

 だからなんなのだ。いや、そいういうものだ、という認識が「リゾーム」を読んで生まれた、ということですかね。

 ところで、先日『コモンの「自治」論』(斎藤幸平+松本卓也編/集英社)第3章の杉並区長の岸本聡子氏が書かれていることに頷いた。「・・・先述した地域政党「バルセロナ・イン・コモン」はデイケア・サービスのコモン化を打ち出しました」(P.101)。「先述した通り、介護や保育、清掃などの<ケア>の分野は、労働者が一番抑圧されやすい職種です。ここをあえて市の直営でやっていくのは、主に労働者を守るためでした。」(P.106)、とある。介助は利益追求の民間がやるのは無理があると思う。サービス単位が決められているものは営利企業に向くわけがない。それを実感している。売上、利益の増大、民営とは基本的にはそれを追求するものだ。しかし、単位が決められたサービスにおいて、かつ様々な条件があって利益を出しづらい構造になっているので、利益をねん出するには、内向きの合理化や、利用者の拡大を目指すだろう。だがそれは人件費の抑圧や、逆に管理業務の増大による人件費の高騰、などなどにつながる。雇用者の給与を上げるためにあるとされる処遇改善加算などは、実にさもしい制度だし(加算を出してやる、ただしバリバリ管理するぞってことで)。しかも処遇改善加算の一部をなんで利用者が負担するのだ。おっと別の話になってきた。話を戻すと、サービスに対する対価が介助者に直接払われればよいではないか、と思うのです。民営とは会社が中抜きして経営を維持するのだから、被雇用者に支払う額を押さえようとするのは当然の行為だ。給与額は相場感を皆で探っての結果でしかないし、他を出し抜くのもその結果でしかない。

 公共事業としてやって介助者に直接給付なんて、膨大な管理業務で無理、だから民営も許す、となったんだろうが。国民の口座さえマイナンバーカードに紐づけて、税逃れやら、眠ってる貯金を見逃さんぞというような、後ろ向きで性悪説でなくて、だったら直接給付とか国民が楽になるような優しい方向でいきましょうよ、と言いたいね。現政権に期待はもちろん全くしてないけど。

 それから消費税については、逆進性が強いし、もう論外なほどに悪税だと前から思ってるんだけど、さらにインボイスだって。あきれる。管理、監視、途方もない業務の発生だ。消費税は医療法人など非課税収入を主に売上とするところにはさらに過酷な税だ。必要な物を買ってもそれに払った消費税は費用として控除されないのだ。実際にお金は出ているのに。そりゃ難しくなるね経営が。それに、ガソリン税やたばこ税などににさらにかかる消費税とはなんじゃらほいなと。ホントに国家の暴力装置だね、税金とは。